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階段を単なる通路にしない②

前回に続きまして、我がコーポラの階段計画です。

コンクリ造ということはお話ししましたが、もう一点ポイントがありまして、2F-3F-屋上のメゾネットの空間のど真ん中に位置しているということです。

前回の記事で「どのような意味づけを加えられるかは・・・・階段の位置などによって大きく変わる」と書きましたが、空間の真ん中に位置するというのは、設計をする上で結構ネックになりました。

3Fから屋上に行く階段は、真ん中に位置していることを利用して、階段に沿って壁を作って奥に個室を作りました。

そして、その壁の階段側には本棚を作りました。

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階段の反対側は、壁を作らずにリビング・ダイニングに剥き出しですので、デザイン/採光/居室性(本棚)など複数の意味合いをつけられたので、単なる通路になることはありませんでした。

問題は2Fと3Fを結ぶ階段です。

3Fにリビング・ダイニングを作って空間を広く設定する一方で、2Fは細かく空間を区切る方針でした。

将来の子供部屋をあらかじめ作ったり、自分の書斎はレコードを鳴らしますし、サニタリーも湿気を抑える必要があったりと、2Fの設備は必然的に細かく区切って閉ざす方向になったのです。

ところが中央に階段があるため、2Fの空間を区切ってみると階段を基準にせざるを得ないのです。

つまり階段に沿って壁や扉を作るので、結果、階段が閉ざされて単なる通路になってしまうのです。

壁があれば飾り棚や本棚は作れますが、閉ざされているとデザインは見せられませんし、明るさも送り込めません。

階段が中央にあるスケルトン・・・・当初、これをかなり恨みました。

中央にあると、玄関からそこまで通路を作らざるを得ないので、これまた床面積のロスですし。

しかし腐ってても仕方ありません、何か考えないと。

最終的にたどり着いたのは、階段をガラス張りにしてしまうこと。

たまたまお風呂場とサニタリーを一体化して、浴槽を空間の中央に置いて見栄えを良くするプランがあって、浴槽を見せるようにしないと勿体ないという方向性が生まれて、入口をガラス戸にしたのですが中途半端なため、いっそのこと階段と接する部分もガラス張りにして、見えるようにしてしまえという思い切ったプランに思い至って、階段に面する片方の壁がガラス張りになりました。

階段を単なる通路にしない②_d0162989_23322826.jpg


次に何となく残された反対側の壁の先にある部屋(書斎&寝室)に何か目立つ物はないのか見てみると、DJブースがあって、壁一面に5000枚のレコード収納がある。

それも見せたら?と考えて、反対側の壁もガラス張りにしてみました。

階段を単なる通路にしない②_d0162989_2333092.jpg


そうすると階段と通ることで、2Fを中央の少し高い位置から展望することができるようになります。

視界が開けるので、階段の上り下りが結構気持ちよい。

また、隣接するサニタリーと書斎/寝室を揃えることで対称感を出して、それをデザインとして見せたら良いのではないかと考えました。

対称になれば、軸となる階段の造形が目立ってくるだろうと。

まずは入口の扉を同じような仕様にしました。

階段を単なる通路にしない②_d0162989_2335590.jpg


ごつい扉ですが、水を使うサニタリー側に合わせて屋外用です。

本当は、縁やサッシのないガラスだけの状態にしたかったのですが。

DJブース側の音を遮断するために、合わせガラスにする必要などもあって、階段周辺はサッシが入ってしまいました。

これはこれでインダストリアルっぽくて気に入ってます。

話の続きです。

隣接するサニタリーと書斎/寝室を「揃える」ために、それぞれの空間の奥の壁一面に造作家具を設置して、色とボリュームを同じにすることで、空間に共通項を作りました。

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(サニタリーの造作洗面台)

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(書斎/寝室の造作レコード棚)

しかも、壁一面のボリュームですから、それがそれぞれの空間の「正面」となり、空間の持つ「向き」が揃いますので、これも対称感につながると思います。

しかも、ガラス張りで色々な物が視界に入り情報過多になってくるところですが、目立つ造作家具も同じ、空間の向きも同じですから、統一感と言いますかスッキリ見せることにもつながります。

階段の左右の空間がそれなりに揃ってきて、対称感が生まれてくると、その中心軸となる階段の造形も何となくですが見栄えがしてきます。

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スケルトン仕様のコンクリ造ですから、見た目に重厚感がありますので、ドスンと中央に陣どって空間をビシっと締めて、正に「軸」となるわけです。

設計をやっている最中は、何となくのイメージで考えたことなのですが、実際に入居して生活していると、階段の存在感は思ってた以上でした、通路として以外にも大きな意味合いを加えることができたと満足しています。

階段の方向と、左右の空間の向きが揃っているところが良いんだと思います。

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空間の中央に階段が設置されていることを悩ましいと感じたところから始まって、最終的にはそれをマイナスではなくプラスにできたかな、と感じています。

階段って実に奥深いです。

ちゃんと分かっているプロの設計士が考える階段って、色々な読み解き方や意味付けがされていて凄いのだろうなと思います。

しかし、我がコーポラでは、階段も設計士ではなく私が自分で考えざるを得なかったような気がしています。
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